「一中節合唱団」の不思議な魅力
株式会社千代田ビルマネジメント 取締役社長
小島篤さん
小島篤さんは東京西ロータリークラブ会員による同好会「一中節合唱団」の代表世話人として、2009年から活動しています。三味線音楽には、多くの人が一緒に歌う形があまりありませんでしたが、合唱スタイルにしたことで、新しい楽しみ方が生まれました。多忙な経営者たちがお稽古を続けている理由はどこにあるのかをお聞きしました。
小島 (資料を見せながら)一中節のいろんな資料がファイルボックスいっぱいあります。
一中 小島さんだから、すぐ資料が出てくるんですね。素晴らしいです。
小島 その中からちょっと目ぼしいものを持ってきました。2011年にグランドハイアット東京で「一中節合唱団」がいちばん初めに登場した、そのときの招待状です。合唱団は2009年にお稽古始めたんですよ。
一中 都一中音楽文化研究所設立記念パーティーをするにあたって、皆さんにやっていただいたらということだったですね。『猩々(しょうじょう)』を語っていただいた。
小島 懐かしいでしょう。これがそのときのプログラムです。
一中 お客様はみんなタキシードですよ。グランドハイアット東京のけやき坂のライトアップがスタートしたときぐらいですよね。途中で猩々が登場するときの「吉兆の合い方」に合わせて、後ろが開いてけやき坂の景色が見えるようにしたんです。持っている歌詞の表紙も、猩々だから赤がいいと思って、赤にしました。黒紋付きと赤もかっこいい。全員が正座するのも大変だし、見台も揃えられないので、立って語っていただいたらどうかと考えました。これも今までにないことです。立ち姿で左手に歌詞を持つ。どういう立ち姿がいいか、歌舞伎の大薩摩のかっこいい立ち姿を、杵屋巳紗鳳(きねや みさほう)さんに聞きました。その方は一中節も都鳳中(みやこ ほうちゅう)っていう名前でやってくださっていたんで、立ち方を習ったんです。褄(つま)を袴(はかま)の中で右手で持つとか、そういうのを指導していただいて、それを皆さんにお伝えしました。
小島 目線も、前から何番目のあの椅子辺りを見るとかね。あとは動くな、と。
一中 そういう点で形を整えた。見ている方はすごくびっくりされてね。非常に感動されました。合唱団の皆さんもよくお稽古してくださいました。この資料を見てもわかるように、こういう小島さんだからこそ、2009年から今まで合唱団が続いているんですね。
小島 今考えると恐ろしいですね。このとき、みんな『猩々』しか知らないんですから。
一中 小島さんにコメントをお願いしたときに、「これしか知らないから、アンコールって言われたらどうしようかと思いました」っておっしゃったのを覚えていますよ。
小島 その発表のときはメンバーが15人でした。始めたときは、もうちょっと少なかったですね。1年間ぐらいやってる間に16、17人になって、今はもう34人です。東京西ロータリークラブの人数は今全体で190名ぐらいです。ロータリークラブとしての人数は多い方です。小さいクラブだと20名ぐらいのところもありますから。34名というのは当クラブ内の同好会でも多いですね。
一中 小島さんが皆さんのモチベーションが下がらないように、いろいろ工夫してくださっているんです。
小島 何もやってないですよ、僕は。何かやり過ぎると辞めてっちゃうから。皆さん一国一城の主だし、あんまり頭から言われるのは面白くないでしょうから、規則のようなものも何にもないです。何か決めなくても、皆さん常識的な範囲で行動してくれます。これも素晴らしいですね。規則は何もない、「来るもの拒まず去るもの追わず」です。うちのクラブの設立が1955年で、2010年が55周年だった。その頃「一中節合唱団」の話が出てきて、55周年ではまだ発表できないですから、次の60周年に向かってみんなでお稽古をやらないかという話になった。
一中 外国からもお客様が見えるしね。
小島 2009年にお稽古をスタートして、2011年にこのパーティー。そんな感じでスタートしたんですね。
小島 楽しんで覚えられる。それで行きたいときだけ行けばいい。
一中 全然義務じゃない。
小島 皆で大勢の人の前で舞台に立てるっていうのも、楽しいことですね。
一中 それは小島さんがいろいろ考えてくださって、機会を作ってくださるからですね。ロータリークラブの行事に出るというのも、なかなか難しいと思うんですよ。小島さんはその辺のところはちゃんと心得てらして、無理にやらせろなんてことも言わない。
小島 言わないです。向こうもお金がかかることですから、あんまりこちらも無理には、だけどなんとなく。
一中 中でも重要な機会に、出していただいて。
小島 ロータリーは、クラブの先に東京全体、それから日本、世界があるわけです。そういうヒエラルキーになっているわけですけども、地区大会でも何回か発表をやりましたよね。
一中 ロータリーの会員でもご存知なかった方に、一中節というものもなかなかいいもんじゃないかって思っていただけていればありがたいです。
小島 たぶん思っていただいていると思いますね。私なんかの語り口では思われませんけども、了中さん(家元)と一中師匠で一緒にやってもらったら本当に素晴らしいですよ。2021年12月に、全国の地区のトップが集まるロータリー研究会を開催しましたが、参加者は奥様と一緒なので600人ぐらいになります。僕がどういうわけかホスト委員長になって、4日間で多くの会議とパーティーがありました。実行側は本当に大変でしたが、「一中節合唱団」はそのうちの一つのパーティーで公演しました。これは画期的なことです。日本中のガバナーと呼ばれるロータリアンのトップ全員が集まったところでやったわけですから。
一中 演目は『石橋(しゃっきょう)』でした。それから小島さんが東京西ロータリークラブの会長になられたときに、「一中節のロータリーソングを作ったらどうか」っていうので、『現代の都(いまのみやこ)』を作詞されたんですよ。ロータリークラブでは毎回みんなでロータリーソングを歌うんです。これがロータリーの奉仕の精神と、一中節の精神を見事に合致させた素晴らしい歌詞だと思っています。これに僕が曲をつけさせていただいて、これも披露したんです。全部英訳がついてます。一中節の精神とロータリーの精神をね、本当によく理解してくださってる。ロータリーのことはもちろんですけども、一中節の精神のことも理解してくださって、一つにまとまっている。これは何かにつけて披露するようにしています。本当に歌詞の内容も素晴らしい。
小島 12月7日のパーティーの公演には450人ぐらいのお客様がお集まりいただきましたけれども、ここでも『現代の都』を披露しました。
一中 内容とか舞台の設営とか、照明、音響、全部小島さんがこまごまと手配してくださった。一中節の歴史の中でも合唱団っていう形で、皆さんで一緒に稽古して一緒に発表するっていうことは今までなかった。皆さん遊び半分じゃなくて、すごく真摯に稽古してくださって。コロナ禍でもZoomでお稽古したり、みんなで集まれるときは小島さんの会社の研修室を夜使わせていただいて。最初はね、ホテルオークラの神前結婚式場を使わせていただいていました。
小島 ロータリーの例会の前後ですね。
一中 例会は毎週金曜日12時半から1時半までなんですけど、その前後の11時半から30分と2時から30分、毎週お稽古したんです。
小島 あの頃がいちばんお稽古が充実してましたね。今もうちょっとお稽古しないと。何か目的ができて初めて稽古するんじゃね。日ごろお稽古しないと、何か目的ができたから急にやるっていうのは変ですよね。定期的にちゃんとやるのが大事ですけど、その方法が何かないかなと思うんです。コロナでやりにくくなったというのもありますが。
一中 芸を稽古する上で、本質的ないちばん大事なことですね。会があるから稽古するっていうのは本来駄目なんで、普段稽古してるのを会で発表するっていうだけなんです。
小島 何でもそうだと思うんですよね。ゴルフだって毎日きちっと練習してるからうまく行く。みんなちょうど働き盛りだから、うまく例会と稽古を組み合わせるとかして定期的にやるのは重要ですね。自分で定期的にやればいいんですが、なかなかそうはいかない。
一中 何にも僕からお願いしないんだけど、どういうふうにしたら皆さんが喜んでこういうことを続けていくか、ちゃんと考えてくださって。これは本当に小島さんじゃなきゃできないですね。
小島 いえ、僕もいつまでできるかわかりませんので、次の人がやってもらわなきゃいけないんですけどね。それまでにうまく線路を引いていければいいなと思って。
一中 僕はお稽古の内容とか話すことは好きで、一生懸命いろんなことをするんですけど、段取りが全然駄目ですから、それをやってくださるから続いている。僕だけで引っ張っていこうっていうのは、途中でお手上げになっちゃうと思います。
小島 何かだんだん尻すぼみになるのは他の同好会を見ても感じます。かっこいいかどうかわかりませんけど、舞台で語るのが楽しみというのもありますね。
一中 まず登場したときの姿勢と目線、それを厳しく皆さんにご指導しています。
小島 これは2021年12月の「ロータリー研究会」での公演の写真です。ただ、コロナ禍でお稽古が足りないのは公演でもよくわかりました。我々だけじゃ申し訳ないので、家元の本物の一中節を聞いていただきたいということで、了中さんにも語っていただきました。一中節にとっては、日本中のロータリアンの皆さんにも知っていただける良い機会になったと思います。
一中 一中節がどういうものかっていうことを、ちゃんと知っていただきたいですよね。
小島 北海道から沖縄までのロータリアンですから。これ乾杯の後ですよ。乾杯の後でも誰もお酒飲んでない。全員ちゃんと舞台を見てる。普通、乾杯の後って結構乱れるんです。まったく乱れてない。びっくりしました。
一中 演出も小島さんです。
小島 この舞台に上がったメンバーは20人ぐらいですね。開催された「ロータリー研究会」では、会議がいくつも並行して走ってるわけです。いくつかに場所がわかれていて、JPタワーであったり、ホテルオークラでやったり、それからメルパルクホールであったり。皆さん地方から奥様も一緒にきますでしょ。3泊ぐらいするから、泊まるところもホテルオークラからプリンスホテルまでいろいろと揃えました。その上移動があるでしょ。そういうすべてを計画しなければいけない。
一中 細かいことだとコーヒーの手配からね。
小島 うちのクラブでも「一中節同好会」の人を中心に、50人ぐらいで委員会を作ってやりました。参加された方が、それぞれ地元に帰って「こういうものを聞いた。ロータリークラブで一中節の同好会がある」っていうことを皆さん話題にして頂けたでしょうね。
一中 グアムの地区大会で、むこうのホテルで映像を流してくださったことがありましたね。
小島 東京の我々の地区に、グアムとかサイパンなど太平洋のクラブも入ってるんですよ。10年に1回、地区大会をグアムでやるんです。それが一昨年でした。そのときに「一中節合唱団」のDVDを持っていって流しましたが、大勢が紋付袴で並ぶだけで、結構絵になるんでしょうね。現地のロータリークラブ会長からいろいろ質問されました。
一中 ただ並んでも絵にならないんですよ。皆さんよく中身がついてます。ピシッと気合が入って姿勢を正して、形はやっぱり大事ですね。ちゃんと立ち方を習っておいてよかった。僕も立って語ったことってないですから。合唱団は、みんなでやれば怖くないじゃないですけど、入りやすくやめやすい。何の規制もない。今の一番新しい形じゃないかな。みんなジェントルマンだから、それを信頼して成り立ってるんですよね。何にも決まりを作らない。全部自由意志なんだけど、皆さんが自然にやれるように小島さんが計らってくださっているのが、続いてる秘訣ですね。
小島 ただ語るだけじゃなくて中身ですよね。習っていると日本人のアイデンティティが揺さぶられるっていうか、そういうところもあるんでしょうね。でもやっぱり、一中師匠の教え方ですね。
一中 反応がいいもんですから、僕自身本当に楽しくて。1時間の稽古の中で40分も喋ってたりするんです。でもそれを本当に皆さん喜んでくださる。
小島 「もうそろそろいいんじゃないですか」って(笑)。その後にみんなで反省会があります。反省しながら一杯やろうっていうことなんです。
一中 それも楽しみで、それだけに来る人がいる。今日何人稽古に見えるからどこのレストランにしようとか、そういうのも小島さんが全部考えてくださるんですよ。
小島 この6月からは、ホテルオークラ東京の神殿で、またお稽古ができるようになりました。
一中 合唱団もそうですが、これだけロータリークラブのことに打ち込まれて、いつお仕事してるのか(笑)。
小島 それは社内でどういう姿を効率よく見せるかということですよ。役者もそうじゃないですか。存在感だけちょっと出しておいて。
一中 「何もしてないよ」でもまずいし、かといって「全部社長が」じゃないですよね。
小島 大体駄目でしょ、オーナー企業はそういうふうにしちゃうと。オーナーの顔色見ちゃうから。安心して働けないですよね。僕は業績も全部オープンにします。賞与も業績連動です。うちは人様の財産をお預かりする仕事です。流動化が激しい時代で、ビルオーナーもすごくドライになってきた部分もあります。一方、昔ながらのビルオーナーさんもいますし、いろいろです。長い目で物事を見ないといけないでしょうね。だから不動産業界にいても、バブルはまったく関係なかったですよ。僕はあの時代はおかしいなと思ったわけです。
一中 そう思えるのもすごい。
小島 うちの仕事は額に汗して働かなきゃいけない。投機とかで儲けちゃうと、みんな働かなくなっちゃう。だからバブルの時代も「投機的な話はもって来ないでください、儲けさせてくれなくてもいいですよ」と断った。会社の業務が違うから。
一中 バブルでどうにもならなくなったっていうのは、本来の業務じゃないのに「これは儲かるかもしれない」って、うっかりのっちゃったということですよね。
小島 そう思います。
一中 それで駄目になっちゃったっていう例は、いっぱいありますよね。
小島 刹那的に儲けるのは、よくないですよね。簡単に儲かるなんて、そんなうまい話がいつまでも続くわけないですよ。それが私の人生観です。額に汗せずに儲けること自体がおかしいでしょう。うちの業界で言うと、不動産を証券化して儲ける、というのがあります。これはこれで必要なことだと思います。
一中 「お金に働かせる」って言いますね。
小島 でもみんながそれだけで終わったら、世の中回っていかないんです。どうしても汗かいて働かないといけない人もいるわけだから、その人たちにきちっとした報酬を払っていかないと。一部でお金に働かせる人もいてもいいですが、そこばっかりが儲かってもね。我々はビルをマネジメントしていますが、その先にはビルのメンテナンスだとか、警備だとかいろいろあります。そういう人たちが働かなければビルはどうしようもなくなる。でも、不動産の証券化で儲ける人は、実際に働く人たちの100倍ももらっています。それってどうしてもおかしくなりますよ。だから汗をかいて働く人手が足らないということになる。そういうところにお金が回るように、考えなきゃいけないでしょう。
一中 ちゃんとしたことをやってる人がちゃんとした保証を得て、それが大事にされるのが社会の目的ですね。
小島 そう思いますね。そういう感覚で考えたら、投資したものが急激に上がるとか、ありえないですよ。バブルの頃はお金を持っててもインフレでどんどん目減りしちゃうから、ものに替えなきゃいけないという時代でした。あの頃、八百屋さんでも魚屋さんでもみんなビル化したわけです。大丈夫なのかと思いました。ビルって、テナントにいくらで入って貰えるとか初めに計画立てますよね。景気のいいときはそれでいいけど、何十年もそれが通るとは限らない。
一中 そのつもりでローン組んだりするんですよね。銀行の人は「家賃で返せますから建てましょう」と言っていた。
小島 銀行だけじゃなくて、当時は生損保なんかもそうだったんです。それからゼネコンも。いろんなところが人にビルを建てさせた。
一中 そのビル自体の管理とマネジメントをやってらっしゃったからわかるんですよね。
小島 そう、収支は未来永劫不動じゃないですよ。
一中 そういう小島さんだから一中節のことをちゃんと考えてやってくださるわけです。これは本当の奉仕の精神ですよ。
小島 一人で習うと大変ですけど、みんなで習えば怖くない。当然一人で習いたいっていう部分もありますが、僕個人の課題曲とチームの曲を並行してやる能力は僕にはないと思う。自分一人で語るものはどうしても熱が入りますよね。そうなるとみんなに迷惑かけちゃう。
一中 本当に前代未聞な形の合唱団ですから、常にどうしたらいいかっていうことを考えてなきゃ、道がないんです。どういう方向にいくか、お稽古場も発表する場所もどういう形にしたらいいかと考えてくださる。
小島 最近、僕に同好会員が「小島さん今度何があるの」って聞く人がいるんですよ。
一中 楽しくやりながら底力がついていって、発表したときに初めて「なるほどな」って言われるのが大事なんですよね。
小島 実際に、何回かそういう体験がありました。それでみなさんがまた出てみたいと思うんでしょうね。紋付袴とかタキシードを着てみなさんの前で語るのを、やっぱりやりたいんでしょう。でも究極的には一中師匠のご性格と博識が、そうさせるのだと思います。それがないと難しい。元々ね、一中師匠はこういう方だから習いやすい。格式張ったりしてたら皆が寄り付かない。それと同好会員は、公演舞台を求めてるんですよね。ゴルフだって練習場ばっかりでは面白くないですから。
一中 だから舞台をちゃんと用意しなきゃね。発表会みたいのも作りたいですね。合唱団は都会(みやこかい・一中節のおさらい会)に出ていただいているんだけど、同好会としても定期的な会があるといいですね。
小島 それは僕が提案しなきゃいけないですね。私どもは本当に事務的なことやるだけで、あとはお稽古に興味津々でみなさんが来るわけです。ロータリークラブって元々親しい仲間ができるところで、様々な年代の友達ができるわけですよ。そういう人たちが習っていて一緒にやろうなんて言われると、じゃあやろうかっていうノリがありますね。
一中 ロータリーに入って友達ができないと、続かないですよね。友達と会うのが楽しいですし、一緒に旅に行ったり、僕はお酒飲まないけど飲みに行ったり、遊びに行ったり。ロータリークラブっていうもの自体が世界の奇跡だと思うんですよ。忙しい人たちがね、毎週金曜日のお昼に集まって何なんだろうこれって。
小島 みなさん、ロータリーというと商売じゃないですね。
一中 利害関係があっちゃいけない。
小島 最近のIT業界の人は入らないですよ、得がないから。ロータリーでいちばんいいのはいい友達ができるってことですよ。それから今までそれなりに成功してきた人が世の中に返すことができる。僕は、理事会なんかでも言っているんです。「迷ったら最終的にみんなのためになるかどうか考えなさい。一部の人のためだったらやめなさい」って。
一中 大事なことですよね。一般的にはロータリーはお金持ちの集まりだとか、暇人の集まりだみたいに言う人もいらっしゃるけど、誤解を恐れず言うと成功している方だけの集まりなんですよね。
小島 そういう形になりますね。商売を目当てに入ってくる人もいるわけですよ。そういう人には、「そういうのを出しちゃうと、みんなも相手にしてくれないよ」と言うんです。
一中 そうなんですよね。本当に不思議。
小島 一生懸命ロータリー活動をしていると、相手の方から「そういう仕事やってるんだったらこういうの見てくれない」って。
一中 それは頼む方も、その方を信頼できてるからいいわけですよね。
小島 信頼関係です。
一中 お医者様でもこの先生にお願いしたらいいかなということはありますね。お人柄です。まずそこから始まるから、営業目的は絶対いけないですよね。
小島 そういう人って見えちゃうから。いろんな手紙を送ってきたりするんですよ。そういう人はやっぱり疎まれる。
一中 小島さんがロータリークラブの中でも、他の同好会の方の印象も決して悪くならないように微妙にバランスをとって、一中節の同好会の存在を知らせてくれる。
小島 クラブの中で僕も言わないんですよ。あんまり言うとみんなから反発を受けますからね。「なんだ一中節の宣伝ばっかりして」って反発する人がいますから。
一中 それは絶妙なバランスが必要で、それがなかったらクラブの中で顰蹙買うことってありますよね。「いい思いしてる」みたいになっちゃう。そこはいちばん難しいかもしれません。
小島 それもやっぱり一中師匠の性格っていうか、人となりが出ているからいいんですよ。
一中 そうですかね。わかんない。
小島 いや、そうなんですよ。
一中 これって奇跡だと思うんですよ。なかなか成り立たないと思う。他に類を見ないですからね。
小島 お蔭様でね。師匠がそばにいらっしゃるから、みなさんが日本の古典音楽に親しめる。本当にそう思います。
一中 一中節は聞いているだけより、お稽古したほうが楽しいですよ。
小島 これを広めるには、一般の何も知らない方にどういうふうにアピールするかも大事だと思うんですよ。あまり格式ばったことはいらなくて。いかに楽しく聞いてもらえるか、ということを考えないといけないですよね。素人が聞いてもなるほどという部分は、ないとね。
一中 客観的に「この曲のこの部分がいいと思いますよ」なんて、ちゃんと小島さんが言ってくれる。
小島 僕なんかがいい曲があったと思っても、初めて聞く人はなんか退屈だなってなっちゃうじゃないですか。それは気をつけないと、語りを聞いてもらうには。それは僕が素人だから言えるんです。
一中 とても大事なことですよね。知らない方がほとんどですから。
小島 まず導入部分として、ちゃんとしたことをやってなきゃいけない。
一中 アピールだけすればいいんじゃないです。
小島 それだけじゃやっぱりね。
一中 ありがとうございます。時々小島さんと食事するんですけれども、必ず合唱団をどうしようかっていう話になりますね。
小島 篤(こじま あつし)
株式会社千代田ビルマネジメント取締役社長
小島篤 作詞 12世都一中 作曲
一中節ロータリーソング『現代の都(いまのみやこ)』
現代の都に集いて和して より良き奉仕を追い求む
あまねく人の幸せ目指す 君と我との西ロータリー
人の思いは様々なれど 出会いの絆を大切に
三千世界の平和を願う 君と我との西ロータリー